今回、語釈を引用した国語辞典は
『広辞苑 第六版』
◇ 解字
象形。左右のあし(止)の象形で、あるくの意。甲骨文にはさらに行の加わった形があり、道をあるくの意を表す。
あるく【歩く】
◇ 語釈
①一歩一歩踏みしめて進む。歩行する。あゆむ。
②あちこち移動する。徒歩または乗物で動き回る。
③野球で、打者が四死球で一塁に進む。
④(動詞の連用形、またはそれに接続助詞「て」の付いた形を受けて)~してまわる。
◇ 語源説
①ア(足)+ル+カ行活用
②アユク(動詞)
③足行(アシユク)
④外来語から
ありく【歩く】
◇ 語釈
あちこち移動する意。人間以外のものの動作にも用い、乗物を使う場合にもいう。平安物語文学で多く使われ、万葉集や漢文訓読体では「あるく」が使われる。
①動きまわる。出あるく。経めぐる。
②往来する。
③出回る。世に広まる。
④とかくしつつ日を送る。(他の動詞に添えても使い)~してすごす。~しつづける。
◇ 語源説
①有来(アリク)
②在行(アリユク)
③足繰行(アクリユク)/足揺行(アユリユク)
あゆむ【歩む】
◇ 語釈
アは足。一説に、ユムはヨム(数える意)の転か
①足を動かして進む。あるく。
②ゆっくりと、着実に進行する。
◇ 語源説
①足数・足読(アヨム)
②足踏(アシフム)
③足行(アユク)
あるく・ありく・あゆむ
◇ 私見
次の表に、あるく・ありく・あゆむが使われた時代の語意をまとめた。
時代 | あるく | ありく | あゆむ |
奈良時代 | 移動 | 〈使われず〉 | 歩行 |
平安時代 | 〈使われず〉 | 動きまわる・移動 | 歩行 |
室町時代 | 移動・歩行 | 移動・歩行 | 歩行 |
現在 | 歩行 | 〈使われず〉 | 歩行 |
上代において、ありくは使われていないため、あるくから派生したものと思われる。
次の表に、外来語説の根拠とされるものをまとめた。(毎回コピペしているが)非歴史的な類似語並列にはあまり意味がない
語族/諸語 | 諸語/語群 | 言語 | 括弧内は語意 |
アルタイ諸語 | オイラト語 | カルムイク語 | alxu(歩む) |
モンゴル諸語 | ブリヤート語 | al-ka(歩む) | |
テュルク諸語 | 南西語群 | オスマン語 | aja-ki(足) |
オグズ語群 | トルコ語 | ayak(足) | |
孤立言語 | ― | アイヌ語 | ariki(来ること) |
◇ その他
民間語源に “walk” – “w” = “alk”(アルク)という説がある。偶然にすぎないが、語源を遡れば “walk” と「歩く」が繋がる可能性を否定はできない。
ふんわりとしたまとめ
「歩く」「歩む」は、ア(足)が同根かもしれない
参考
- 暮らしのことば 新語源辞典
- 広漢和辞典
- 広辞苑 第六版
- 国語語源辞典
- 日本語源大辞典