今回、語釈を引用した国語辞典は
『福武国語辞典〈新デザイン版〉』
りんご【林檎】
◇ 語釈
バラ科の落葉高木。春、白色の花を開き、秋には球形の実を結ぶ。果実は甘ずっぱい。
◇ 解字
【林】会意。木+木。木がならびたつさまから、はやしの意を表す。
【檎】(広漢和辞典に記載なし)
◇ 語源説
①果実が美味なために、その「林」に「禽(トリ)」が多く集まる
②Langobert[フランス語でナシの一種を指す]
◇ 私見①
李時珍(りじちん)『本草鋼目』(1578年)の「此果味甘、能來眾禽於林、故有林禽、來禽之名」が根拠とされている。しかし、同書は薬物の知識をまとめたものであり、語源説に関してはほとんどが文字に囚われたもので信憑性が薄い。
◇ 私見②
梨と林檎は同じバラ科(または、ナシ状果)に属して非常に近い果物であることを根拠にしているが、偶然だと思われる。
◇ その他
林檎は、漢語では “liəmkiəm” のように -m で終わる言葉である。日本ではリムコムと音訳し、やがて音便によってリウコウ、さらに撥音化しリンゴというようになったとされる。
年代 | 文献 | |
不明 | 中央アジアの山脈南部で林檎の祖先が自生する | |
前328年頃 | アレキサンダー大王がカザフスタンで矮化林檎を見つける | |
前100年頃 | 上林苑(秦、前漢の皇帝のための大庭園)で林檎を栽培 | |
931年~938年 | 和名類聚抄 | 「利宇古宇(りうこう/りうごう)」 日本に林檎が持ち込まれたのは、少なくともこれ以前 |
1578年 | 本草綱目 | 林に禽(トリ)が多く集まるという説が書かれる |
1603年 | 日葡辞書 | 「Ringo」 |
山中襄太氏によれば、中国固有の語は1字からできていて、外国から来たものの名前は、その外国語の発音に合わせて、2字以上の字を組み合わせてつくるのが原則である。
中国固有の語 | 松・竹・梅・桃・桜・梨・柿・栗・李・茶・菊・桐・木・草・鳥・獣・魚・虫・山・川・水・陸など |
外来語の発音に合わせた当て字 | 葡萄・枇杷・柘榴・蜜柑・麒麟・鳳凰・鸚鵡・鶺鴒・鴛鴦・鷓鴣・珊瑚・琥珀・瑪瑙・瑠璃・玻璃・曼荼羅・陀羅尼など |
したがって、林檎は当て字であると推定している。
ふんわりとしたまとめ
林檎の語源は、その木に鳥が集まることではない可能性が高い