今回、語釈を引用した国語辞典は
『明治書院 精選 国語辞典 [新訂版]』
しじま【黙/静寂】
◇ 語釈
①静まり返ること。静寂。
②黙って物を言わないこと。沈黙。
◇ 解字
【黙】形声。犬+黑声。黑は、くろい、ものの動きがないの意。犬が人におしだまってついていくの意。だるまの意を表す。
【静】爭+靑声。爭は、あらそいの意。靑は、すみきるの意。争いがすみきる、しずまるの意を表す。
【寂】形声。篆文は、宀+尗声。尗はいたむの意。屋内がいたましい、さびしい・静かの意を表す。
◇ 語源説
①口をシジメル
②口のシジマル間
③棲遑
◇ 私見①~②
しじまのシジは、シジ(縮・緊)と同根とされる。縮(ちぢ)むは、しじむ(蹙む/縮む)の転。
◇ 私見③
日本書紀に「棲遑(しじま)ひて其の跋(ふ)み渉(ゆ)かむ所を知らず」とあり、この「しじまふ」は、行ったり来たりする、おちつかないさま、めぐりさまようという意味である。
【棲】形声。木+妻声。妻は私に通じ、ひっそりするの意。
【遑】形声。辵+皇声。皇は、大きくひろがるの意。あてもなくひろがり歩いて、いそがしいの意を表す。
棲遑(せいこう)は、対になる意味の漢字を組み合わせた熟語である。
◇ その他
語根シジは、「沈む」「静か」「雫」などの語根シズと通じているかもしれない。
閉じた口の前に人差し指を立てて「シー」と言う世界共通のジェスチャーがあり、静かにしてもらいたいときに使う。この「シー」が、もしかしたら「シジ」や「シズ」に通じているのかもしれない。
ふんわりとしたまとめ
しじまの語源は、しじむに通ずるかもしれない
参考
- 岩波 古語辞典 補訂版
- 広漢和辞典
- 日本語源大辞典
- 明治書院 精選 国語辞典 [新訂版]
サムネイルに用いた絵は、Claude-Marie Dubufe 作「La Discrétion」である。