「やくざ」の語源

今回、語釈を引用した国語辞典は
『旺文社 国語辞典[第十一版」』

やくざ

◇ 語釈
①いい加減で役に立たないさま。取るに足りないさま。また、そのようなもの。「―な仕事」
②ばくち打ちや無頼漢。ならず者。
[語源]「三枚ガルタ」というばくちで、八・九・三の札が出ると負けることからいう。

語源説
①博打で、八・九・三の札がくること
②役者[傾き者の意]
③yaqza[ペルシャ語で不寝番・立ち番のこと]
④役座[戦国時代の足軽部屋の頭分]
⑤座役[中世、座に課された租税]

◇ 私見
①の説の初出は、新井白蛾(あらいはくが)『牛馬問』(1755年)とされている。

亡き父かたりしは、〈中略〉是もと博徒の言葉にして常庭の人につかふべき事にあらねども、今は天下の常語となりぬ、物の惡きをヤクザと云ふ事は、博奕に三枚といふものをするに、八九の数を高目上々として、十とつまるは数にならず八九三なれば廿につまる故、益にたたず、それより彼輩のうちにては、すべて物の惡き事の隠語を、八九三といひ始たる


『牛馬問』(ぎゅうばもん)は、江戸時代中期の儒学者である新井白蛾が、人からよく尋ねられる物事について記したものである。目録にあって気になった「柏手」「くそ」「れろれろ」「人を食ふ国」「猿の剣術」を読んだ。でたらめが多いが、どれもそれっぽく説明されていて面白かった。①の説は面白いが、新井白蛾が考えた嘘のように感じた。根拠が無いために、亡き父が語っていたことにしたのではないかと思う。仮に、亡き父が本当に語っていたとしても、それを根拠に語源であると断定することは難しい。

◇ 私見
八切止夫『切腹論考』によると、

明暦二年版の『武者物語』の中に、陣中賭博の禁として、「古き侍の物語に曰く。荒し子(力もちの小者)、部屋の役つきもの(部屋頭)、寝茣蓙をとくに賜るを役座(ヤクザ)というが、陣中にまで、巻き持ち来りて、これにて藁の長短を引く勝負をさせ、その内より損料としての役座銭を取るという」云々の記載がある。

『武者物語』を読んだが、そのような記載は見当たらなかった。時間を返してほしい。

◇ 私見⑤
ヤクザという語は古くからカタカナで書かれているので、座役の倒語が語源である可能性は高い。例えば、ネタという語は、種の倒語でありカタカナで書かれる。

ネタの語源はこちら

その他
筆者が所有している13冊の国語辞典のうち11冊が、「やくざ」の語源は賭博の八・九・三の札が語源であると説明していた。通説と書くべきだと思う。そもそも、語釈に語源をつける必要があるのかと思われるかもしれないが、筆者は読んで楽しいので必要だと思う。欧米諸国では、国語辞典に語源の説明をつけることを普通としている。

ふんわりとしたまとめ

やくざの語源は、博打の八九三の札ではなさそう


参考

直リンクを載せたが、日本古典籍総合目録データベースで『牛馬問』『武者物語』と検索して、状態が良いもの、もしくは読みやすい字のものを選ぶと良い。

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