今回、語釈を引用した国語辞典は
『旺文社 国語辞典[第十一版]』
えげつない
◇ 語釈
手段などが、露骨でいやらしい。厚かましくてあくどい。「やり方が―」
◇ 語源説
①意気地(いくぢ)なし
②えぐい/えごい
③いかつい
(えぐいの語源はこちら)
◇ 私見
えげつないの「ない」は、「せわしない」「せつない」などの形容詞をつくり、その意味を強調する接尾辞とされているが、説①「意気地(いくぢ)なし」が語源であれば、否定の「ない」であると思われる。
1240年頃 『承久記』 | 壱岐判官知康と申すいくぢなしが 勤めに付かせ給ひて、 | いくじなし |
1641年 『そぞろ物語』 | 酔に酔(ゑひ)、在郷の百姓 かたこといひて、いくぢなき風情 | だらしない |
1662年 『身楽千句』 | 野辺の闇路にいげちなき中 | いたわしい |
1662年 『剥野老』 | 君をこひ茶のいきぢもしらで | いくじ |
1706年 『宇津山小蝶物語』 | いげちなくもさみせられじ (軽蔑サレマイ)と枕持ち上げ | 情けない |
1747年 『万戸将軍唐日記』 | ヱヱいげちない、埒の明ぬ、 もう爰へ見えたぞや | 薄情である |
1756年 『義仲勲功記』 | あのの物のいうてゐると、 いげちないは男の気、 | 厚かましい |
1751~64年頃 『男倡新宗玄々経』 | 在郷の熱鉄坊にも出会ひ、 いげちなきうきめにあふ事也 | むごい |
1786年 『短華蘂葉』 | 庄なんのまあおれがいつ。 そんないげちない事した弥 | 薄情である |
1868~70年頃 『両京俚言考』 | いげつない不仁不道徳の 利欲家をいふ | |
1920年 『父親』里見弴 | なんで、こない、 えげつなうなんなはってん |
ふんわりとしたまとめ
えげつない ← いげつない ← いげちなし ← いくぢなし
参考
- 岩波 古語辞典 補訂版
- 旺文社 国語辞典[第十一版]
- 国立国語研究所『日本語歴史コーパス』
- 精選版 日本国語大辞典
- 日本語源大辞典
- Wikipedia -山岡元隣-