「おせち」の語源

今回、語釈を引用した国語辞典は
『三省堂国語辞典 第七版 小型版』

おせちりょうり【お節料理】

◇ 語釈
正月に食べるために、前から作っておく料理。

解字
【節】形声。竹+皀卩声。皀卩は、ひざ関節の象形を含む。ふしの意を表す。

語源説
①節(せち)[呉音]
②御節供(おせちく)/節会(せちえ)

◇ 私見
節日の神供を意味する「御節供(おせちく)」の略という説②の他に、節日を意味する「節(せち)」そのものが馳走をいうようになり、後に接頭辞「お」が付いた説①が考えられる。実際に、960年頃より「節(せち)」が節振舞(正月の馳走)をいう例がある。
次の表に、「節」「節供」「節会」の用例をまとめた。

797年
『続日本紀』
元日等のに及りては、
当階の色[ノ服]を着せよ
節句
節日
960年頃
『忠見集』
ある所の御屏風に
正月せちする所あり
節振舞
正月の馳走
974年
『蜻蛉日記』
いみじう節会がちなるころにて節日の宴会
974年
『蜻蛉日記』
三月三日、節供などものしたるを、
人なくてさうざうしとて
節日の神供
1001年
『枕草子』
御節供まゐり、若き人々、
菖蒲の腰ざし、物忌つけなどして、
節日の神供
1050年頃
『経信卿母集』
彌生(やよい)の日数のうちに
夏のの来たるをわきまへ
時節
室町末~江戸初期
『波形本狂言 末広』
一族達にお節(セチ)を申す節振舞
正月の馳走

◇ その他
節は、竹のふし。転じて、時季の切れ目。節句はもともと「節供」。
「お節(御節)」「ご案内(御案内)」などの敬語を作る接頭辞「お」「ご」を、漢字で書くか平仮名で書くか特に決まりはないが、文学の講義で教授が「お」は平仮名で「ご」は漢字で書くと良いとおっしゃっていたので、今日までそれに従っている。例外は多数あるが、基本的に「お」は和語に「ご」は漢語につくため、そのように使い分けると良いのだろう。

ふんわりとしたまとめ

お節料理の「節」は、時季の切れ目


参考

  • 岩波 古語辞典 補訂版
  • 暮らしのことば 新語源辞典
  • 広漢和辞典
  • 国立国語研究所『日本語歴史コーパス』
  • 語源海
  • 三省堂国語辞典 第七版 小型版
  • 精選版 日本国語大辞典
  • Wikipedia –
  • Wikipedia –御節料理
  • Wikipedia –源経信
  • Wikipedia –壬生忠見

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