今回、語釈を引用した国語辞典は
『福武国語辞典〈新デザイン版〉』
あしか【海驢/葦鹿】
◇ 語釈
アシカ科の海獣。オットセイに似る。雄は二メートル以上。体は暗褐色で足はひれ状。
◇ 解字
【海】形声。水+毎(旧字では毋の部分は母)声。毎は、くらいの意。広く深く暗いうみの意を表す。
【驢】形声。馬+盧声。盧は、柳で編んだ飯びつで、小さくまるいの意。
【葦】形声。艸+韋声。韋は、長大の意。成熟したあしの意を表す。
【鹿】象形。つののある雄のしかの形にかたどり、しかの意。音形上は婁に通じ、その角が、巻きあげた髪型のようなしかの意。

1823年に肥前国唐津領の海辺に漂着した海獺(かいだつ アシカ)をスケッチした図。九尺 ≒ 2.7m
◇ 語源説
①アシシカ(葦鹿)
②アマシカ(海鹿)
③アイヌ語から
◇ 私見①
『出雲国風土記』の神社リストに「葦鹿社(あしかのやしろ)」とある。したがって、「葦の生える所にいる鹿」が語源である可能性が高い。
◇ 私見②
葦の群生する湿地帯は、そもそもアシカが活動しにくい場所のため、海鹿の説を支持する者もいる。しかし、アシカは、餌となる魚が安定して得られる河口でも多く見られる。そのため、河口域の葦原でよく見かけることがアシカの語源になったとして不思議ではない。
◇ 私見③
江戸期にアイヌの生活、風俗とともに紹介されたらしいが、根拠となる文献がない。
アシカは本来、絶滅したとされるニホンアシカを指した。このニホンアシカは、縄文時代以降の日本各地の遺跡でその骨が発見されていることから、日本近海広域に分布していたと推定されている。したがって、北方のアイヌ語を輸入する必要がないと思われる。アイヌ語を保存するより前にニホンアシカが絶滅したためかは分からないが、そもそもアシカのアイヌ語が見つからない。

川原慶賀が1825年頃に描いたニホンカモシカ
◇ その他
アシカは、記紀において美智(ミチ)という。
ふんわりとしたまとめ
アシカの語源は、葦鹿かもしれない
参考
- 魚類譜 国立公文所館デジタルアーカイブ
- 広漢和辞典
- 国立国語研究所『トピック別アイヌ語会話辞典』
- 語源海
- 語源辞典 動物編
- 古事類苑全文データベース
- 日本語源大辞典
- 福武国語辞典〈新デザイン版〉
- 風土記 現代語訳付き【上下合本版】
- Wikipedia –ニホンアシカ–
この記事のサムネイルに用いた写真は、「不朽の自由作戦」でアメリカ海軍が軍事利用したカリフォルニアアシカの Zak を撮ったものである。ザックは、軍隊のものと思われる物体や、脅威となる可能性のある物体を見つけるように訓練された軍用アシカである。