今回、語釈を引用した国語辞典は
『明治書院 精選 国語辞典 [新訂版]』
ほし【星】
◇ 語釈
①夜空に小さく光って見える天体。
②小さくて丸いもの。
③目当て。目星。「星を付ける」
④相撲などで勝負を示す印。「白星」
⑤年月。「星移り、人変わる。」
⑥九星の内で、その人の生まれ年に当たる星。運勢。「よい星の下に生まれる」⇒宿命
⑦犯人。
◇ 解字
形声。もと、晶+生声。晶は、ほしの象形。生は淸に通じ、すみきっているの意。澄んだ光のほしの意。
◇ 語源説
①ホは火の義、シは助詞
②ホイシ(火石)
③ホシロ(火白)
④外来語から
(火の語源はこちら)
◇ 私見①~③
「火影(ほかげ)」「火垂る(ほたる)」のように、火(ほ)は多くの語に付いて複合語をつくる。したがって、これらの説は、火と何かしらの語が結びついたと考えたのだろう。
◇ 私見④
奈良時代もしくは平安時代以降に、p →(f → )h に発音が変化したため、火(ヒ・ホ)は火(pi・po)と発音したという。次の表に、外来語説の根拠とされるものをまとめたが、非歴史的な類似語並列にはあまり意味がないと思われる。
語族 | 語派 | 言語 | 星の意 |
孤立言語 | ― | アイヌ語 | nociw |
朝鮮語 | pyöl | ||
シナ・チベット語族 | チベット・ビルマ語派 | グルン語 | pira |
ナガ語 | peti/piti-nu | ||
オーストロアジア語族 | モン・クメール語派 | モン語 | noung |
ムンダ語派 | ホー語 | ipil | |
コルク語 | epil | ||
サンタル語 | ipil | ||
ムンダリ語 | ipil | ||
ツングース語族 | 南ツングース語派 | ナナイ語 | pöul |
満州語 | ushiha |
筆者は、とても身近な存在である星は、古くから日本にあった言葉だと勝手に思っているが、『岩波 古語辞典 補訂版』は、星が朝鮮語 “pyöl” と同源と明記している。
◇ その他
星を想像すると、星空よりも星一つ、もしくは、まばらな星々が思い浮かぶ。しかし、古代は光害がないのだから、晴れた夜の日には満点の星空が広がっており、星々は今よりもずっと密集していたはずだ。自然環境において、夜に影を作るものは3つあるという。月と金星と天の川だ。それくらいに星空は明るい。したがって、星の語源が「火」であることは自然だと思う。
ふんわりとしたまとめ
星の語源は、火(ほ)かもしれない
参考
- 岩波 古語辞典 補訂版
- 広漢和辞典
- 国語語源辞典
- 日本語源大辞典
- 明治書院 精選 国語辞典 [新訂版]