今回は『ブリタニカ 国際大百科事典』を語釈として用いました。
ふくろう【梟】
◇ 語釈
フクロウ目フクロウ科。全長50cm。羽角はなく、羽色は暗褐色や黄褐色の複雑な縞の入った灰褐色である。虹彩は褐色。全国の低地から低山帯のよく茂った林に留鳥としてすみ、日中は木の枝に止まって休み、夜間活動してネズミなどをとる。3~4月頃、木の穴や崖の穴、建物のすきまなどに白い卵を2~4個産む。雄は「ごろすけほーほー」と聞える太い声で鳴く。昔は人家付近にも普通にみられたが、近年は減少している。
◇ 解字
会意。鳥+木。鳥を木の上につきさしたさまで、ふくろう・さらすの意を表す。
◇ 語源説
①鳴き声から
②毛のフクレタ鳥
③フクラフ(父食)/ハハクラフ(母食)/フホクラフ(父母喰)
④フクロ(袋)
⑤ugutt(モンゴル語で梟の意)
◇ 私見①
梟の鳴き声は不気味なものとされている。
狼の性、 梟の情にして、鼠のごとく窺ひ、狗のごとく盗む。
常陸国風土記
梟の情とは、悪鳥といわれる暴虐性のこと。古代中国では、梟を悪声と評価し、後に親を食う不孝の鳥というイメージが発生した。
・気色ある鳥のから声に鳴きたるも、 梟はこれにやとおぼゆ
源氏物語
・もとより荒れたりし宮〈中略〉うとましう、気遠き木立に、梟の声
・梟の鳴かむよりも、いともの恐ろし
方言も、フルツク・ホーホードリ・ホロスケなど、泣き声に基づくと思われるものが多い。しかし、フクロウ科の鳥が全て同じ声で鳴くわけではない。また、古代において、声よりも独特な形状のほうに注目されている。
◇ 私見③
梟は親を食べない。
◇ 私見④&⑤
モンゴル語で、袋(フクロ)を “uguta”、梟(フクロウ)を “ugutt” と言う。2語の類似性と音が日本語と似ているようだ。
uguta > hugudo > hukulo、
ugutt > hugud > huguda > hugudo > hukulo
無理があるように思われる。しかし、梟は上代、「フクロフ」といったため、語源が袋に通じている可能性は高い。
◇ その他
梟は特殊な鳥で、古代から強烈なイメージが付加されてきた。ギリシア神話では、知恵と戦争の女神アテネの随従である。その理由は、賢者のごとき目にあるとされている。縄文土器にも、梟の目の部分を抽象化したデザインのものがある。
ふんわりとしたまとめ
梟の語源は、分からない
参考
- 源氏物語(新編日本古典文学全集)語彙検索
- 広漢和辞典
- 国語語源辞典
- 語源辞典 動物編
- サントリーの愛鳥活動 –日本の鳥百科–
- 縄文記号の世界 縄文記号講座 第5回 縄文土器の女性記号「フクロウ」前編
- 続・国語語源辞典
- 中国古代の動物観をめぐる研究―鳥のイメージから見る古代の環境と心性 矢島明希子
- 日本語源大辞典
- バードリサーチ –鳴き声図鑑–
- 風土記 現代語訳付き【上下合本版】
- ブリタニカ 国際大百科事典