今回、語釈を引用した国語辞典は
『明鏡国語辞典 第二版』
なでしこ【撫子/瞿麦】
◇ 語釈
夏から秋、花弁の緑が細かく裂けた淡紅色の花を開くナデシコ科の多年草。秋の七草の一つ。カワラナデシコ。ヤマトナデシコ。
◇ 解字
【撫】形声。手+無声。無は、おおいかぶせるの意。手をおおいかぶせて、なでる・やすんじるの意を表す。
【子】象形。頭が大きく、手足のなよやかな乳児の象形。
◇ 語源説
①撫でし子
②撫擦草(ナデサスリグサ)
◇ 私見
語幹ナデは、やさしくいつくしむという意味で、「ナダラカ」「ナダめる」と同根であると考えられている。
シコは、過去の助動詞「き」の連体形「し」+「子」であるとする掛詞通りのこの説だか、なぜ過去形なのか説明できない。
◇ その他
撫子は、女性ではなく男性にも例えられていた。次は、笠女郎(かさのいらつめ)が大伴家持に贈った歌である。
朝ごとに 我が見る宿の なでしこの 花にも君は ありこせぬかも
万葉集
大伴家持が撫子を好いていることを念頭に歌った歌だと思われる。
次は、枕草子の一節である。
草の花は撫子、唐のはさらなり、大和のもいとめでたし
平安時代の貴族にも愛でられていたようだ。
ナデシコは、万葉集において、石竹・石竹花・瞿麥・瞿麦・牛麦花・奈泥之故・那泥之古・奈弖之故と、出雲国風土記において瞿麦と表記されている。
ふんわりとしたまとめ
撫子は、「なだらか」「なだめる」と同根かもしれない
参考
- 岩波 古語辞典 補訂版
- 広漢和辞典
- 明鏡国語辞典 第二版
- 日本語源大辞典
- 風土記 現代語訳付き【上下合本版】
- Wikipedia –ナデシコ–