今回、語釈を引用した国語辞典は
『新明解国語辞典 第七版』
ミイラ【木乃伊/蜜人】
◇ 語釈
[mirra=没薬(モツヤク)という防腐剤の名]
人間などの死体が、自然(人工的)にそのままの形でかわいて固まったもの。蜜人(ミチヒト|ミツジン)。「―取りが―になる〔=人を連れもどしに行った者が、自分も同じようにとりこになってしまう〕」「木乃伊」は、オランダ語 mummie の音訳という。かぞえ方:一体(イッタイ)
◇ 解字
【蜜】形声。虫+宓声。宓は、びっしりつまっている・封じこめる意。蜂が巣の中にびっしり封じこめたみつの意を表す。篆文は、虫虫+鼏声。鼏はおおう意。
◇ 語源
ミイラ
↑mirra(ポルトガル語:没薬)
↑myrrha(ラテン語:没薬)
↑mumia(中世ラテン語:瀝⻘)
↑mūmiya’(アラビア語:瀝⻘)
↑mūm(ペルシャ語:蝋)
◇ その他
日本語の「ミイラ」は16〜17世紀にポルトガル人から採り入れた言葉とされる。本来「ミイラ」は没薬を意味するが、遡れば英語 mummy と同源である。
ミイラ 日本語? | ||
↑mirra ポルトガル語 | 没薬(メラ) 中国語 | |
↑myrrha ラテン語 | mummy 英語 | ↑myrrha ラテン語 |
↑mumia 中世ラテン語 | ↑mumia 中世ラテン語 | ↑mumia 中世ラテン語 |
↑mūmiya アラビア語 | ↑mūmiya アラビア語 | ↑mūmiya アラビア語 |
↑mūm ペルシャ語 | ↑mūm ペルシャ語 | ↑mūm ペルシャ語 |
myrrha は、アフリカ、アラビアなどに自生するカンラン科の植物。myrrha から取った樹脂が、ミイラをつくるのに用いられた。
本邦の先輩、木乃伊をミイラなりとす、然るに紅毛医の曰、ミイラは木乃伊にあらずといふ、未知何是
大和本草(1709年)
陶宗儀が元の時代の事柄を詳しく記した『輟耕録(1366年)』に漢字表記の「木乃伊」が出現する。「木乃伊」は日本語の漢字音読みで「モクダイイ」、北京語読みで「ムーナイイー」である。「木乃伊」は当て字(中国での音写)とされているが、正確には不明。「木乃伊」はモミイと読み、オランダ語 mummie などに由来するという説もあるが、「乃」は「ミ」と発音しない。慣用読みだろうか。
木乃伊 ラテンでムミヤと呼び、和蘭呼びてモミイといふ
東雅(1717年)
「ミイラとる人ミイラなり」ということわざの用例は、江戸時代から見られる。
ふんわりとしたまとめ
ミイラの語源は、ポルトガル語 mirra(没薬)
参考
サムネイルに用いた写真は、ツタンカーメン王の石棺を見るハワード・カーターである。