今回、語釈を引用した国語辞典は
『新明解国語辞典 第七版』
ねこ【猫】
◇ 語釈
①家に飼う(愛玩用)小動物。形はトラに似て敏捷。暖かい所を好み、ネズミをよくとるとされる。〔ネコ科〕
②土製の行火(あんか)。
③三味線・芸者の俗称。〔三味線はネコの皮を張るので言う〕
④「猫車・ネコヤナギ」の略。
◇ 解字
【猫】犬+苗声。苗はねこの鳴き声を表す声符。ねこの意を表す。貓の俗字。
【豸】象形。獣が体をふせ、背を高くして、えものをねらっている形。
◇ 語源説
①擬声語「ネ」「ネウ」+接尾辞「コ」
②擬声語「ニャーゴ」「ネウク」
③猫の呉音「メウ(ミョウ)」+接尾辞「コ」
④寝る子
⑤ニコゲ(和毛/柔毛)
◇私見①&②
ネコの語源は、鳴き声に基づくと考えるのが最も自然であると思われる。「ね」という擬声語が存在したのか、「ねうこ」ならば「にょうこ」と変化するのが原則ではないかなど、その擬声語の語形について様々な説があるが、ここでは取り上げない。次の表に、世界における猫の鳴き声をまとめてみた。
アイヌ語 | mek | 日本語 (源氏物語) | にゃー (ねうねう) |
英語 | meow、mew | ギリシア語 | niaou |
ドイツ語 ポルトガル語 | miau | クメール語 | ηa:w |
フランス語 | miaou | ネパール語 | nyān |
ロシア語 | myau | 韓国語 | nya-ong |
スペイン語 | miau | ラトビア語 | ņau |
イタリア語 | miao | アラビア語 | nuwwww |
m の音で表す言葉が多く、n の音で表す言葉は少数であった。
◇ その他
「ねこ」と「ねこま」の初出文献について、次の表にまとめた。
新訳華厳経音義私記 (奈良時代末期) | 猫 尼古 |
日本霊異記(822年) | 我正月一日成狸 (狸をネコと訓むかは微妙) |
新撰字鏡(898年) | 猫 祢古 |
本草和名(918年) | 家狸 一名猫 和名禰古末 |
ネコマが、ネコの古称である可能性はかなり低いだろう。
ふんわりとしたまとめ
ネコの語源は、鳴き声から
参考
- 岩波古語辞典
- 広漢和辞典
- 国語語源辞典
- 新明解国語辞典 第七版
- 奈良地域関連資料画像データベース 興福寺本『日本霊異記』
(55頁15行目に「狸」の記載あり) - 日本語・英語・クメール語におけるオノマトペの対照研究 岩崎真哉
- 日本語源大辞典
- reddit How do you spell the sound cats and dog make (onomatopoeia) in your language?
- VOGUE JAPAN 世界70カ国、70通りの犬&猫の鳴き声は?