今回、語釈を引用した国語辞典は
『岩波 国語辞典 第7版 新版』
しあわせ【仕合せ/幸せ/倖せ】
◇ 語釈
①まわり合わせ。運。なりゆき。
②運がよいこと。幸運。幸福。
◇ 解字
【幸】象形。手かせの象形。執が手かせにとらえられた形であるのに対して、さいわいにも手かせにはめられるのを免れて、しあわせの意を表す。音形上は佳に通じ、めでたい・よいの意を表す。
◇ 語源
為(し)合はすの連用形の名詞化
◇ 私見
平安末~鎌倉初期 『古本説話集』 | 多くの物ども損じて、今日の供養に 為合はせすべきにあらず | うまく合う ようにする |
1489年頃 『雑事覚悟事』 | もろひざをつきてもくるしからず。 当座のしあわせによるべし | めぐり合わせ |
1520年頃 『中華若木詩抄』 | 学問して、功名を立んと思たれば、 何とやらん、しあわせわるうて | めぐり合わせ |
1527年頃 『三体詩抄』 | 為合はせ悪しくして、落第したぞ | めぐり合わせ |
1534年 『四河入海』 | 不思議にしあはせがよう勝つまでぞ | めぐり合わせ |
室町時代 『御伽草子 鶴の翁』 | 今日は為合はせよく侍りて、 多く釣り候ふなり | めぐり合わせ |
室町末~江戸初期 『虎明本狂言』 | そなたは仕合な人じゃ〈略〉 それは誠に仕合でござる | 幸運 |
江戸初期 『狂言六義』 | そなたは天下一のしあはせな人ぢゃ | 幸運 |
1636年 『仮名草子 可笑記』 | 仕合せ次第に札を落し | 運 |
めぐり合わせがよい場合にも悪い場合にも用いられていた「仕合わせ」という語は、室町時代から江戸時代にかけて、評価する語を伴わず良い評価を示すようになったと思われる。「天気」などもこれと同じで、その言葉のみで晴天を示すようになった語である。
ふんわりとしたまとめ
幸せは、為合はすの連用形の名詞化
参考
- 岩波 古語辞典 補訂版
- 岩波 国語辞典 第7版 新版
- 暮らしのことば 新語源辞典
- 国立国語研究所『日本語歴史コーパス』
- 精選版 日本国語大辞典
- 日本語源大辞典
- Wikipedia –古本説話集–
2019/11/22 に『岩波 国語辞典 第8版』が刊行されたので、第7版は捨てて、次回から第8版を使う予定です。