今回、語釈を引用した国語辞典は
『三省堂国語辞典 第七版 小型版』
とき【時】
◇ 語釈
①過去から現在、未来へとすこしも止まることなく進み、決して もどることのないもの。変化を通して、また時計などを使って知ることができる。時間。瞬間。
②[刻]昔の時間の区切り。ひとときは、今の約二時間。
③年代。時代。時期。
④季節。
(⑬まであるが省略)
◇ 解字
形声。日+寺声。寺は、甲骨文・古文では之であり、之はゆくの意である。すすみゆくひ、ときの意。
◇ 語源説
①常(とこ)
②疾き(とき)
◇ 私見
「時」はほとんどの場合、「~之時(~のとき)」「是時(このとき)」「于時(ときに)」のように、時間の流れそのものではなく、ある時点を指して使われる。したがって、ある時点や期間を指す意味から発展して、語釈①のように抽象的な「時」の感覚が生まれたと考えられる。
- ①は、時が永遠であること、永久に流れ続けるから「常」
- ②は、時が早く過ぎるから「疾き」
①の説は、時間の流れそのものを指しており、語源とは考えにくい。
②の説は、時間の流れそのものが早いという解釈のほかに、ある過去の時点が過ぎ去ってゆくのが早いという解釈ができる。清少納言が『枕草子』に「ただ過ぎに過ぐるもの 帆かけたる舟。人の齢。春、夏、秋、冬。」と書いたように、昔から時の流れは早いという認識があるとはいえ、この説は文学的なこじつけのように思われる。
◇ その他
“time” の「無限に継続する時間」という抽象的な感覚が記録されているのは14世紀後半からである。
『万葉集』において、「とき」は「等伎」「等吉」「登伎」「登吉」「登岐」「登枳」と表記される。
ふんわりとしたまとめ
「時(とき)」の語源はよく分からない
参考
- Online Etymology Dictionary –time–
- 広漢和辞典
- 古事記、全文検索
- 古代語の時間副詞「時(とき)に」の考察 ―古代中国語「時」と比較して― 山崎貞子
- 三省堂国語辞典 第七版 小型版
- 大言海
- 日本語源大辞典
- 日本書紀、全文検索