今回、語釈を引用した国語辞典は
『三省堂国語辞典 第七版 小型版』
うたたね【転寝】
◇ 語釈
床(トコ)に入らないで衣服を着たまま、しばらくねること。仮のねむり。(ここでの「しばらく」は、少しの間という意味だろう、と書いておく)
◇ 解字
【転/轉】形声。車+專声。專は、糸を糸巻にぐるぐるまきつけるの意。車をまわす、めぐるの意を表す。
【寝/寢】甲骨文・金文は会意で、宀+帚。宀は、家屋の象形。帚は、ほうきの象形。清められた神殿の意。音形上は侵などに通じ、奥深く侵入したところにあるへやの意。のち、ベッドを意味する爿が付加された。
◇ 語源説
①ウツツネ(現寝)
②ウタタネ(転寝)
③ウタウタネル
④ウトウトネル
◇ 私見①
なぜウツツがウタタに転じるか分からない。
◇ 私見②
うたた【転た】はっきりした原因がなく。何がということなく。
この意を持つのは後世である。本来は「いよいよ、ますます(甚だしく)」という意味であり、うたた寝とは結び付かない。
◇ 私見③
次の日本書紀歌謡から、何となくを意味する語幹ウタが語源であるという。しかし、誤りだろう。
許能弥企塢 伽弥鶏武比等破 曾能菟豆弥 于輸珥多弖弖 于多比菟菟 伽弥鶏梅伽墓 許能弥企能 阿椰珥于多娜濃芝 作沙
日本書紀
「于多娜濃芝」は、「歌楽し」であり、「うた楽し」ではない。
◇ その他
平安時代に小野小町が次の恋の歌(夢の歌)を詠んでいる。
うたゝねに戀しき人を見てしより夢てふ物はたのみ初てき
古今和歌集
おそらく、この歌が「うたた寝」の初出だろう。
ふんわりとしたまとめ
うたた寝の語源は、分からない
参考
- 暮らしのことば 新語源辞典
- 広漢和辞典
- 語源海
- 古事類苑全文データベース
- 三省堂国語辞典 第七版 小型版
- 続・国語語源辞典
- 日本語源大辞典
サムネイルに用いた絵は、イリヤ・レーピン作「休息」である。